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1. インプラント(人工歯根療法)のお話
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おいしいご飯が食べたい。おいしく食事をいただきたい。この思いは老若男女問わず、おそらく人類共通のものでしょう。おいしく食事をいただくためには様々な条件が揃はなくてはなりませんが、その条件の一つに健康な歯があげられます。しかしながら歯が健康な時には、なかなか歯の大切さには気がつかないもので、悪くなってはじめて気がつくことが多いようです。歯を失った場合、失った本数が少なく、前後にしっかりした歯が残っていればその歯を土台にしてブリッジと呼ばれる固定式の方法も選択できますが、失った本数が多い場合や、前後にしっかりした歯がない場合は義歯(入れ歯)の適応となります。しかし義歯はその構造上、様々な問題点を抱えており、たいへん不自由なものなのです。例えば、食事の時に義歯と残っている歯や歯ぐきとのあいだに食べカスがはさまる。噛んだり、しゃべったりした時に義歯が動いたり、はずれたりする。硬いものが噛めない、あるいは噛み切れない。食べ物の食感や温度がわかりにくい。話したり笑ったりした時に義歯が見えるのが気になる。義歯の異物感になじめない。しゃべりにくい、などです。これらの問題は義歯の適合を良くすることによって改善される場合もありますが、いくら良い義歯を作っても、義歯の構造上の限界があります。義歯のお世話になってみると改めて健康な歯の大切さを思い知るわけです。しかしながらいくら悔やんでも失った歯は戻りませんし、かといって義歯では満足できない。失った自然の歯と同じように使える何か良い方法はないか?ということで考え出されたのがインプラント(人工歯根)を利用した治療法です。
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義歯は歯ぐきのかたちに合わせて作ったレジン(プラスチック)あるいは金属の床(土台)の上に人工の歯を並べてあり、義歯を支えているのは軟らかい粘膜です。部分義歯の場合は残っている歯にクラスプと呼ばれる金具をかけて固定の補助としますが、総義歯の場合は粘膜の上にのっているだけです。このためにどうしても動き易く、不安定となりますし、広い範囲の粘膜を覆うため違和感を生じやすいのです。部分義歯の場合は固定の金具を使用するため総義歯に比べ安定性は増しますが、金具をかけている歯の負担が増えるため、歯を傷める危険性がありますし、金具が目立つ場合があります。これに対してインプラントは、顎の骨に直接、金属製のネジのような形をした人工の歯根を埋め込み、これを土台として人工の歯を作りますので動きませんし、はずれません。義歯のような床も必要なく、ほぼ天然歯と同じ位の大きさで作れますので違和感も少なくなります。ブリッジのように他の健全な歯を削る必要もありません。また、噛んだときの振動がそのまま顎の骨にも伝わりますので自然な身体の一部のように感じることができます。さらにこの適度な刺激により骨の代謝が促進されるため、健康な顎の骨の状態の維持につながります。
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さて、ここでみなさんは、人間の身体にとって異物であるはずの人工材料を使用しているのに本当に自分の歯と同じように使えるのか?そんなものを顎の骨に埋め込んで大丈夫なのかと心配されるかもしれません。1980年代以前に使用されていた初期のインプラントの多くは骨と結合しないため成功率は一般的に低く、適応範囲も限られていました。しかし1990年代に入り、チタンという金属が人間の骨に直接結合するオッセオインテグレーションという現象を利用したインプラントシステムの研究、技術が飛躍的に発展し、安全で確実な合理的システムが確立されました。現在、このシステムは世界中で活用され、何十万人もの患者さんの治療に役立っています。5年後の生着率(成功率)は下顎で95~98%、上顎で90~95%程度で、適切なメンテナンスがなされていた場合、20年以上満足に機能することが確認されています。
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インプラント治療の技術、材料が飛躍的に進歩したため、その適応範囲はかなり広くなりましたが、残念ながら全ての人に適応できるわけではありません。全身的な要因としては、糖尿病や重度の骨粗鬆症がある場合、成功率は著しく低下しますし、30分から2時間程度の局所麻酔の手術に耐えられるだけの健康状態が必要です。局所的な要因としてはインプラントを入れたい場所に十分な骨の量がない場合、骨移植が必要となります。したがって、インプラント治療を行うためにはまず、インプラント治療が適応できるかどうかを見極めるための全身および局所の精密な検査が必要となります。
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インプラント治療を開始する場合、インプラントを骨に埋めるわけですが、現在一般的な手術法は2回に分けて手術を行います。まず、1回目の手術でインプラントの本体であるフィクスチャーを骨内に埋め込み、骨と結合するまで下顎で3ヶ月、上顎で6ヶ月程度待ちます。その後、2回目の手術でフィクスチャーの上部に歯を支えるためのアバットメントと呼ばれる部品を連結します。2回目の手術後、粘膜の状態が落ち着いたら型をとり、新しい歯を作ります。新しい歯ができてからもインプラントを長持ちさせるためにはメンテナンスがたいへん重要ですから2〜6ヶ月ごとに定期診査を受けて下さい。それと同時に家庭でもきちんとした歯磨きやうがいを行い、常に清潔に保つように心がけることが大切です。
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最後に、気になる費用ですが、現在、健康保険の適用範囲外のため全額自費となります。実際にかかる費用は患者さんの状態により異なるため一概には言いにくいのですが当院の場合、総費用は1本あたり25~35万円程度が目安です。興味を持たれた方、もっと詳しく知りたいという方は担当医にご相談下さい。
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