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5. 親知らずは時限爆弾!
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第三大臼歯のことを一般には親知らずと呼んでいます。親知らず以外の永久歯は6歳から12歳のあいだに生えますが、親知らずは生えてくる時期がこれよりずっと遅いので、生えてきたのを親が知らないことから親知らずと呼ぶようになったといわれています。
この歯は、前から8番目の歯であることから8番、あるいは智恵がついたころに生えてくるということで智歯とも呼びます。親知らずは本来なら10代後半から20代のころに生えてくるはずなのですが、現代人は食生活の変化からかあごの退化傾向が見られあごの骨格が小さい方が増えており、正常に生える方はたいへん少なくなっています。
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「たかが歯一本」なんて軽く見ていると思わぬ事態を招きます。
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親知らずが正常に生えており、上下の親知らずがきちんとかみ合って機能していれば抜く必要はありません。しかし、親知らずが部分的に露出した状態で止まっていたり、埋まったまま出てこない場合(埋伏歯)、歯列から外れた場所から生えてきた場合、くり返し歯肉炎を起こしたり、反対側の歯肉や頬粘膜をかむ場合、大きなむし歯がある場合、あるいは矯正治療を行うなどの場合には抜歯が必要となります。たとえ現在自覚症状が無かったとしても埋まっている親知らずを放置した場合、親知らずの周りはバイ菌のたまり場になりやすいため智歯周囲炎を起こして化膿したり、知らない間に前方の歯との間からむし歯になったり骨が吸収したりすることがあります。あるいは親知らずを包んでいる膜が異常に増殖して膨らみ、のう胞とよばれる袋状の腫瘍をつくることもあります。
自覚症状の無いまま進行することも多く、痛く無いから放って置いても大丈夫という訳ではありません。抗生物質が発達していなかった時代では親知らずの炎症がもとで命を落とすことは珍しくありませんでした。現在でも親知らずなどの歯の炎症を放置すると重症化して敗血症や縦隔炎を起こすこともあり、この場合は命にかかわってきます。「たかが歯一本」なんて軽く見ていると思わぬ事態を招くことがあります。正常に生えていない親知らずは時限爆弾のようなものなのです。また、横向きの親知らずを放置すると後ろから出てこようとして前の歯を押すため、歯並びが悪くなりやすくなります。
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できるだけ若いうちに抜いておかれることをお勧めします。
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以上のような理由に加え、若いほうが傷の治りが早い、年齢とともに親知らずと骨の癒着がすすみ抜歯が困難になる、高血圧や心臓病など全身的な疾患があると抜歯にともなう危険性が増す、などを考慮するとできるだけ若いうちに抜いておかれることをお勧めしています。特に女性の場合には、妊娠中に親知らずが炎症を起こすこともしばしばあり、治療に難渋することがありますので、妊娠前に親知らずを抜いておかれることを強くお勧めします。
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治療方法
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さて、親知らずを抜く気になってきた所に水を差すようですが、この親知らず、なかなかの曲者で抜くのが厄介なことが多いのです。骨の中に埋まっていたり、歯の根が曲がっていたり、膨らんでいたり、周りの骨とくっついていたりと、その状態は患者さんにより多種多様です。一見、まっすぐ生えているように見えても思わぬ苦戦を強いられることもあります。
埋まっている親知らずを抜く場合、まず親知らずの上の歯肉を切開し親知らずのあたま(歯冠)の周りの骨を削って取り除いたあと、親知らず本体を細かく分割して抜歯し、最後に切開した歯肉を縫合します。スムーズにいっても20分〜30分くらいの時間がかかりますし、状態によっては1時間以上の時間がかかることもあります。抜歯後翌日に傷の洗浄を行い、約1週間後に抜糸します。一般的には外来通院で局所麻酔下にて1本ないし2本ずつ抜きますが、治療期間を短縮したい方、局所麻酔で歯を抜くのは怖いという方、あるいは親知らずの埋まっている位置があまりにも深い場合など、入院して局所麻酔もしくは全身麻酔下にて4本一度に抜く方法もあります。いずれにしても上手に抜くにはかなりの技術を要しますので歯科口腔外科の専門医で抜歯するのが無難です。
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治療後について
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歯を抜いた当日は激しい運動や入浴、飲酒、喫煙は控えて下さい。いずれも腫れがひどくなったり、傷の治りが悪くなったりする原因になります。食事は麻酔がきれた後、食べやすい物を食べて下さい。ただし、抜歯後当日のうがいは出血の原因になりますので控えて下さい。抜歯後当日は唾液に血が少し混じる程度の出血なら心配ありませんが、帰宅後に万が一、再出血した場合は傷口にしっかりガーゼをあて15分ほど強くかめばほとんどの場合出血はおさまります。この時、脱脂綿やティッシュペーパーを使うと逆効果になるので注意して下さい。もし、30分以上ガーゼをかんでも出血がおさまらない時は連絡して下さい。歯を抜くときに骨を削ったりしますので抜歯後はかなり腫れることもあります。腫れは2〜6日くらいでひきますが、抜歯当日と翌日は冷たい水でしぼったタオルなどで冷やすと腫れを抑える効果があります。ただし、冷やし過ぎると腫れが長引く原因にもなりますので氷で直接冷やしたり、2日以上冷やし続けたりしないで下さい。腫れの強い場合など炎症がきついと一時的に口が開き難くなることもありますが、炎症の消退とともに軽快します。麻酔は2〜3時間できれます。麻酔がきれてくると痛みもでますが、これは本格的に痛みがでる前に早めに鎮痛剤を内服することにより防げます。また、親知らずの根の先と顎の骨の中の下歯槽管という神経の通り道とが非常に近いため1%程度の確率で下口唇の知覚鈍麻(触った時の感覚が鈍くなる)が発生します。運動神経はまったく別の場所を通っていますので唇の動きには影響ありません。感覚は徐々に回復し、ほとんどの場合およそ3ヶ月ほどで治ります。
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以上のような抜歯に伴うリスクを聞くと抜くのに尻込みされるかもしれませんが、放置した場合のリスクを考えるとやはり早めに抜かれることをお勧めします。歯科口腔外科の受診をお待ちしています。
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歯科口腔外科部 歯科医師 本多易史
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