日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

日赤和歌山の放射線治療

2022/09/08

日赤和歌山医療センターには放射線治療の専門医が3名在籍しており、各診療科と密に連携し質の高いがん診療の提供を行っています。

 

一般的にあまり知られていない放射線治療について、診療体制や副作用のこと、放射線治療のメリットなど、3回にわたり根來慶春 放射線治療科部長に伺っていきます。

 

 

昨年(2021年)から当医療センター内に「日赤がんセンター」がオープンしました。外来の診療科配置が再編成され、がんの診療機能が強化されました。初診から診療科の枠を超えて診療に当たるようになったため、放射線治療科も外科や内科の医師と協力してチームを組み、より多くの患者さんに関わるようになりました。

 

患者さんの治療方針を決める際に、複数科が関わると選択肢が増えます。手術がよいのか、放射線治療がよいのかと考えていき、全ての組み合わせの中で患者さんにとっていちばん良い選択肢に決めるわけですが、放射線治療科もチームに入ることで治療の幅がより広がっています。裏付けるように、当医療センターの放射線治療件数は拡大傾向です。がんセンターというシステムが機能し、患者さんの選択肢を増やすことができた結果といえるでしょう。

 

 

放射線治療の流れ

放射線治療の専門医の存在や、放射線治療がどんなものなのかを知らない方も多いと思います。外科や内科の先生は近所のクリニックでお会いできますが、放射線治療医は、日常的に出会う機会がありませんから当然す。

 

 

当医療センターの場合、放射線治療医は外科・内科の先生方と相談し、この患者さんには放射線治療が適しているだろうとなってはじめて、放射線治療科の外来で診察する際にお会いします。放射線治療は臓器を温存しながら「がんを根絶させる」、もしくは「症状を緩和させる」といった目的で行います。

 

もちろん、放射線治療科の診察を受けたら、必ず放射線治療しなければならないかというとそうではなく、患者さんの体力や体調、過去の病歴を確認しながら診ていますので、他に適した治療方法はないか、本当に放射線治療が最良の選択肢なのかを考えながら診察しています。

 

当医療センターの320列CT

 

放射線治療をすると決まったら、CTが必要になります。病状ごとに、放射線治療に向いた姿勢でCTを撮影して、どの範囲で放射線を当てるか、強さはどうするかなどを専用のコンピューターで計算します。そのため、検査としてのCTを撮影した直後でも、もう一度CTを撮影します。

 

当医療センターの放射線治療装置

 

放射線治療が始まると、治療は1030回前後かけて行います。回数は、がんのある場所や病状によって変わります。平日に毎日治療するので、30回の放射線治療だと約1ヵ月半かかります。1回の治療にかかる時間は1520分くらい、その内、実際に放射線が体に当たっている時間は5分もありません。

 

治療中には、定期的に放射線治療医が診察して、副作用の程度や体調の変化を確認します。放射線治療が終わった後も、外科や内科に通うのと同じく、放射線治療科にも受診していただき、その後の経過を診察します。

 

 

仕事を続け、自宅から通える放射線治療

放射線治療は、入院が必要とは限りません。同時に抗がん剤を使う場合は別ですが、放射線治療だけなら外来通院で治療が可能です。仕事を半日休められれば、仕事と治療を両立できます。例えば、乳がんの患者さんは比較的若い患者さんが多く、仕事をしながら放射線治療を受けている方がたくさんいらっしゃいます。

 

 

体力が落ちているなどで仕事と治療の両立が難しい方は、職場に診断書を提出することで、お休みをとっている方もおられます。お一人ひとり状況は異なりますので、相談しながら治療を進めます。

 

ただ、皆さんが心配されるのは放射線治療の副作用についてだと思います。次回はその副作用について詳しくご説明します。

 

 

根來 慶春(ねごろ よしはる)

日本医学放射線学会放射線治療専門医。医学博士。

趣味は、パソコンをいじること。好きなラーメンは、お箸が立って倒れないような濃厚ラーメンです。

 

 

放射線治療① 日赤和歌山の放射線治療(2022年09月08日公開)←今回

放射線治療② 放射線治療の副作用(2022年10月13日公開)

放射線治療③ 放射線治療中の生活(2022年11月10日公開)

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