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乳腺外科


当科について

ご案内

場所

本館3F

受付時間

新患:8時〜11時30分まで
再来:8時〜11時30分まで

乳腺外科部のご紹介

乳がんは年々増加の傾向にあり、現在では女性に発生するがんのトップとなっています。また、社会全体として乳がんという病気への関心もさまざまな活動を通じて高まっています。このような背景から2009年4月に日赤和歌山医療センターは乳腺疾患を専門に扱う「乳腺外来」を外科部の中に設立いたしました。2011年4月からは、より乳がんの診断ならびに治療を専門的にかつ迅速に行うために乳腺外科部が設立されました。

乳がん診療は急速に発展しています。診断技術や治療方法は年々改善され、全体の治療成績も格段によくなりました。今後もこの大きな流れは変わらず、さらに多くの新しい診断法や治療法、あるいは予防法が実地臨床に導入されると考えられます。また、ひとりひとりの性格が異なるように、乳がんの性質もひとりひとりで異なります。したがって、乳がんに対して画一的な治療は適切とはいえず、個々の乳がんに適した診断や治療を行わなければなりません。日赤和歌山医療センター 乳腺外科部は‘個々の乳がん患者さんに最適な診断ならびに治療を提供する’ことを常に心がけています。

日本赤十字社和歌山医療センター
乳腺外科部 部長 芳林浩史

外来のご案内

当センターの乳腺外科は乳がんの診断を受けた方や、乳がん検診の結果精密検査を必要とする方に可能な限り迅速かつ適切な診断・治療を最大限に心掛けております。そのため初診患者さんの診察は「当日受診外来」(月、水、金曜日のみ)でおこない、受診には院内または他医療機関からの紹介状が必要となります。また、和歌山県におけるがん診療連携拠点病院の役割として高度な医療を提供するために当科では乳がん検診希望の方や、治療を必要としない良性乳腺疾患の経過観察は原則として行っておりません。

無症状や治療を必要としない良性乳腺疾患などの患者さんで乳がん検診もしくは経過観察をご希望の方は当センター内の健診部 健康管理センター乳がん検診部門で行っておりますので、そちらをご利用ください。また、ご相談いただければ症状・目的に応じて日赤和歌山医療センター医療連携ネットワーク(約600施設加盟)よりご紹介させていただきますのでお気軽にご相談ください。

診療内容のご案内

乳腺疾患のトータル・ケアの提供

乳がんは年々増加傾向を示し、今では女性のライフサイクル病と考えられるようになってきております。そのため、当センターは無症状の時からの乳がん検診をはじめ、乳腺症や線維腺腫などの良性疾患、乳がん、そして乳がんの再発を含めた乳腺疾患のトータル・ケアの提供をおこなっております。

つまり無症状、乳がん検診希望の方や良性疾患で治療を必要としない経過観察のみの方は当センターの健診部 健康管理センター乳がん検診部門※1において視触診・マンモグラフィ検査・乳腺超音波検査を行い、乳がんの早期発見に努めてもらいます。ここでのマンモグラフィ読影は検診マンモグラフィ読影認定医による二重読影を行って診断精度を高く保っています。また比較的待ち時間が少なく、利便性もよいため受診者にとって引き続き継続しやすいような環境を提供しています。

さらに、そこで精密検査が必要な場合は、直ちに当センターの乳腺外科部でより高度な診断・治療を迅速におこなうことが可能です。当センターの乳腺外科部で異常が見つからない場合や明らかに良性疾患で経過観察のみなどの場合は健診部 健康管理センター乳がん検診部門で引き続き乳がんの早期発見のため継続した乳がん検診をおこなっていただきます。
このような体制で乳がんの早期発見から早期治療を目指します。

負担の少ない医療の提供(低侵襲性医療)

乳がんの診断・治療の成績を下げることなく、患者さんにとって負担の少ない医療を提供しています。乳がんの診断は乳腺超音波やマンモグラフィなどの画像診断と細胞診や針生検、切開生検などの病理診断の両者によって行われます。以前は胸にしこりがあると外科的に摘出して診断をしておりましたが、最近は画像診断においては乳腺MRIを、病理診断においては針生検やハンディマンモトーム生検の導入をおこない‘切らずに診断を行う’ことに重点をおいて患者さんに負担の少ない方法で診断を行っております。

また、治療においては乳房温存療法を積極的に採用しております。腋窩の治療についてもセンチネルリンパ節生検を行い、患者さんに負担の少ない治療を提供しています。

これらにより最低限の負担で乳がんの診断や治療を行い、最大限の恩恵を受けるよう心がけております。

一人一人に最適な医療の提供(個別化医療)

ひとりひとりの性格が異なる様に、乳がんの性質もひとりひとりで異なります。そのひとりひとりに最適な医療の提供を心掛けています。

つまり、針生検やマンモトーム生検などで病理組織を採取する時に乳がんかどうかを診断するだけでなく、乳がんであればどのような性質なのかを当センターの病理診断専門医が詳細に調べてくれます。その性質に基づいて一人一人に最適な治療戦略を立てます。例えば手術を先に行うこともあれば、薬物療法を先に行う方もいます。また、薬物療法の中で化学療法を行う方や内分泌療法を行う方などさまざまです。下に図示したような当センターでの治療アルゴリズムを参考に、個々に適した治療を行い、また余分な治療は回避することを心掛けています。

一人の患者さんを複数の専門の医療従事者で 診断・治療・看護をするシステム (集学的医療・チーム医療)

今まで述べてきました「乳腺疾患のトータル・ケアの提供」、「負担の少ない医療の提供」、「一人一人に最適な医療の提供」について、乳腺外科部のみで行うのは十分と言えません。

また、従来のがん治療はがん患者さんが受診する科ごとに治療方針が異なることもあり、どれが自分にとって最善の治療なのか選択するのが困難なこともありました。

そのため当センターは一人の患者さんを複数の専門の医療従事者で診断・治療から看護を行うシステムを構築しております。乳腺外科部はその窓口と考えていただければいいかと思います。もちろん乳腺外科部の中でも患者さん情報は共有しておりますので、どの担当医になっても治療方針は同じです。

例えば乳がんの治療を始める前に、乳腺専門医、放射線診断専門医、放射線治療専門医、病理診断専門医などによる「日赤和歌山乳腺診断カンファレンス」で検討し診断を行っております。さらに「日赤和歌山乳がん治療カンファレンス」で治療方針を決定しています。
このように一人の患者さまを複数の専門医で検討することにより、各分野の専門医からいろいろな意見がでますので、その中で患者さまに最適な治療を選択することができます。

 

さらに医師だけでなく乳がん治療のために入院した際は、病棟看護師長をはじめ病棟看護師との「日赤和歌山乳がんケアカンファレンス」を行い、一人一人にきめ細かなケアを提供しています。

また、病棟看護師やリハビリ科の作業療法士により乳がん術後の有害事象の一つである患肢の拘縮やリンパ浮腫予防を専門的な立場から指導していただくように「日赤和歌山乳がん術後リハビリプログラム」を作成いたしました。

さらに化学療法のための外来通院において外来看護師、薬剤師の方々と「日赤和歌山乳がん化学療法カンファレンス」を行っており、そのなかで患者さんの服用している薬剤の相互作用をチェックしたり、専門の薬剤師から患者さんへ抗がん剤の説明をおこなったりしております。

 

これら複数のカンファレンスは一人の患者さんを複数の専門の医療従事者で診断・治療・看護を行うだけでなく、患者さんの情報を共有することも目的としています。当センターはこのような乳がん診断・治療において、かかすことのできない集学的医療を医師・看護師・薬剤師・作業療法士などが集まったチーム医療で提供し、治療成績の向上を目指しています。

その他のご案内

現在はございません。


スタッフ紹介

医師

芳林 浩史 (よしばやし ひろし)

役職 部長
卒業年 平成9年
専門分野 乳癌
資格
医学博士
京都大学病院 乳腺外科 非常勤講師
日本乳癌学会評議員
日本乳癌学会乳腺専門医・指導医
日本外科学会外科専門医・指導医
検診マンモグラフィ読影認定医

中木村 朋美 (なかきむら ともみ)

役職 医師
卒業年 平成24年
専門分野  
資格
検診マンモグラフィ読影認定医

古武 剛 (こたけ たけし)

役職 嘱託
卒業年 平成17年
専門分野  
資格
日本内科学会認定内科医
日本血液学会専門医
がん薬物療法専門医

その他

西山 恵理 (にしやま えり)

乳がん看護認定ナース

榎本 多恵 (えのもと たえ)

乳がん看護認定ナース

秋丸 憲子 (あきまる のりこ)

認定遺伝カウンセラー

(平成28年4月1日現在)


疾患・治療

チーム医療のご紹介

診療内容の項目でもふれましたが、当センターの乳腺外科部は乳がん診断・治療において医師、看護師、薬剤師、理学・作業療法士、事務スタッフなどからなるチーム医療を大切にしています。ここの項目はそれぞれのチーム医療についてご紹介いたします。

日赤和歌山乳腺診断カンファレンス

今まで乳がんは「硬いしこり」で発見されることが多かったのですが、近年マンモグラフィを含めた診断機器の発達により、「硬いしこり」をつくる前の早い段階での発見が可能となってきています。また、乳がんはマンモグラフィや超音波、乳腺MRIなどの画像検査と細胞診、針生検やマンモトーム生検などの病理検査により総合的に診断が行われます。そのため、当センターは乳腺専門医をはじめ、放射線画像診断専門医、病理診断専門医によるカンファレンスでいろいろな角度から、より正確な診断を行っています。

日赤和歌山乳がん治療カンファレンス

「日赤和歌山乳腺診断カンファレンス」で診断が確定し、治療が必要な場合に乳腺専門医、放射線画像診断専門医、病理診断専門医に加え、放射線治療専門医も参加してカンファレンスを行っております。乳がんの治療は集学的治療といって手術だけでなく、化学療法や内分泌療法、放射線治療などを個々に応じて組み合わせながら治療を行い、成績の向上を目指します。

例えば乳房温存術を行った場合は残存乳房に放射線照射を行い、残存乳房からの局所再発を減少させます。この時、全員に同じ照射の仕方ではなく、画像診断結果や病理結果に基づいて検討し、個人個人に適した放射線照射をカンファレンスで決定しています。また、各分野の専門の先生と一同に集まって乳がん治療を検討することにより、いろいろな意見がでます。そして、その中で患者さんに最適な治療を選択し、治療成績を上げるようにしています。

日赤和歌山乳がん外来化学療法カンファレンス

近年、がんの化学療法は外来化学療法に移行しつつあります。ひとえに嘔気・嘔吐や骨髄抑制などの化学療法に伴う副作用を軽減できる支持療法の進歩が大きいと思われます。乳がんの化学療法も同じで、外来化学療法が中心となっています。

しかしながら、抗がん剤を点滴するのですから、副作用を慎重に注意して投与しなくてはいけません。そして、期待する効果を得るためには、決められた量を決められた投与期間で行うためには患者さんの状態を十分把握しておかなければいけません。また、他科からいろいろな薬を内服している患者さんもいます。その場合、現在内服している薬と抗がん剤との相性にも注意しなくてはいけません。

そのため、当センターは外来通院治療室(主に抗がん剤を投与する部屋)の看護師と専門の薬剤師さんと一緒にカンファレンスを行い、患者さんの治療・ケア・使用薬剤などに関して検討しています。また、初めての化学療法を行う時には入院でおこなっています。そして入院中に専門の薬剤師さんが使用している抗がん剤の説明を始め、いろいろ薬に関して相談に乗ってくれます。

もちろん患者さんの治療内容は事前にカンファレンスで検討済みです。また、患者さんと相談した内容で改善が必要な場合は、後日カンファレンスで検討され、より快適に入院中・外来通院ともに化学療法を行えるように心がけています。

日赤和歌山乳がんケアカンファレンス

乳がん患者さんが主に入院する南館6階病棟と南館7階病棟の看護師長をはじめ、看護師のみなさんとカンファレンスをしています。ここでは主に医師側からは患者さんの治療内容や治療目標、入院中の注意点などについて、看護師側からは患者さんのケアについて話し合い、お互い患者さんに対して情報を共有することに努めています。そして乳がん患者さんが手術や化学療法などで入院した時にスムーズに治療やケアが行えるような体制をしています。

日赤和歌山乳がんリハビリカンファレンス

乳がん診断・治療の進歩により、格段に治療成績もよくなってきました。その反面、治療に伴う副作用と長く共存していくことも少なくはありません。当センターは乳がん術後の副作用の一つである患肢の拘縮とリンパ浮腫の予防に対して取り組みを開始いたしました。入院中に患肢の拘縮の評価から運動方法の指導をリハビリ専門のスタッフが指導をおこない、またリンパ浮腫の予防はいろいろな講習会で知識を深めてきた看護師が指導を行っております。


乳房に何か心配のある方

この項目をご覧になっている方は、おそらく乳房に違和感や痛みなど、いつもと違う感じがあるので心配だという方が多いと思います。
その中で以下の症状はないでしょうか?

  • しこりのある方
  • 異常な乳汁分泌のある方
  • 乳房の皮膚が赤い方
  • 乳頭の皮膚がただれている方
  • わきの下にしこりがある方
  • 検診のマンモグラフィで異常(しこりや石灰化など)を指摘された方

いずれの症状も直ちに乳がんというわけではありませんが、このような症状がある方はなるべく早めに、乳腺疾患の診察をしている病院へ相談してください。

詳細は<乳房にしこりなど異常のある方>の項目をご参考下さい。

次に、上記のような症状がない方で、今までと違うと感じる方で、日ごろ乳がん検診を受けていない方は、一度乳腺疾患の診察をしている病院へ相談してください。

一般に乳腺疾患の診察をしている病院へ受診すると、まずは簡単な問診と視触診をおこないます。また、必要によりマンモグラフィと乳腺超音波検査などをして、乳房に異常がないかどうかを調べます。

そして、乳房に乳がんを疑わせるしこりや異常がない場合は、引き続き乳がん検診を受けていただくか、しばらく高度な診断が必要ならば乳腺外来で経過をみて、異常がない場合は乳がん検診を受けていただくことになります。

日赤和歌山医療センター 乳腺外科部は健診部 健康管理センター乳がん検診部門と綿密な連携をとっております。無症状や乳がん検診希望また治療の必要のない良性疾患などの場合は健診部 健康管理センター乳がん検診部門でマンモグラフィを含めた検査で乳がんの早期発見に努めています。そこで、精密検査が必要と判断された場合は直ちに乳腺外科部でより高度な診断を行います。診断の結果、異常みつからないまたは治療の必要がない良性疾患の場合は再び健診部 健康管理センター乳がん検診部門で1年毎の定期検査を受けていただいております。また、日赤和歌山医療センターでは医療連携ネットワーク(約600施設)を利用して症状や目的にあった乳がん検診施設をご紹介させていただいておりますので、お気軽にお尋ねください。

下図にあげたような乳がん検診サイクルで早期発見に努めてください。

乳房にしこりなどの異常を感じる方

乳房にしこりなどの異常を感じる方はなるべく早く乳腺疾患を診察している病院で相談をした方がいいでしょう。
まずはその異常と感じていることが乳がんかどうかをはっきりさせる(診断する)ことが必要です。

そのためにはマンモグラフィ、乳腺超音波検査など行い乳がんを疑わせる病変があるかどうか調べます。
マンモグラフィは乳房を挟み込んでその中にしこりや石灰化などがないかどうかを調べる検査です。乳腺超音波検査は乳房にゼリーを塗り、しこりなどがないかどうかを調べる検査です。また、必要があれば乳腺MRI検査を行うこともあります。無症状や明らかな良性疾患の場合を除いて、乳房にしこりなどの異常がある場合はこのように複数の検査を組み合わせることで、より確実な診断が可能になります。

以上の検査を画像診断といいますが、画像診断だけではより確実な診断が困難な場合があります。その場合は次にあげる病理検査を行います。

病理検査には外来で簡便に行える細胞診(しこりの中の細胞で良悪性を判断する検査)から、局所麻酔をして組織というかたまりを採取する針生検やハンディマンモトーム生検、さらに手術場でおこなう切開生検があります。それぞれ、長所と短所があります。後者ほど採取できる量が多いので、診断がより確実になりますが、その分乳房に傷が残ることがあります。逆に前者ほど簡便で、乳房に傷が残ることはほとんどありませんが、採取できる量が少ないので、診断が困難なことがあります。よって、画像診断と予測される病理診断を基に病変を採取する方法を検討いたします。

乳房にしこりなどの異常を認める場合は画像診断と病理診断の一致で最終的に診断を行います。
その結果、乳腺症や線維腺腫など明らかな良性病変であれば引き続き乳がん検診を受けていただいたり、場合により乳腺外来で短期間経過観察を行い、そこで問題がなければ乳がん検診で早期発見に努めてもらいます。

詳細は<乳房に何か心配のある方>をご覧ください。
 

もし、乳がんが発見された場合はいろいろ治療法に関して相談することになります。

詳細は<乳がんと診断された方>をご覧ください。

乳がんと診断された方

乳がんと診断された場合、「乳がんとはどのような病気なのか」正確に理解することが必要です。

1.日本人の乳がんは増加している
図1に部位別がん罹患率の推移を示しました。がん罹患率という言葉がでてきましたが、これは平たく言えばがんの発生率と考えてください。乳がんの罹患率や死亡率は年々増加の傾向にあり、特に乳がん罹患率に関しては30年前と比べると約2.5倍に増加し(図2)、2000年頃からは女性に発生するがんのトップになりました。また毎年約4万人弱の方が乳がんにかかり、約1万人の方が亡くなっております。

胃がん、大腸がんや肺がんは高齢になるにつれて増加しますが、乳がんは40歳代半ばに一番多いという特徴があります。この年代の女性は仕事や家事・育児も非常に重要な位置を占めている方々であり、ひとたび乳がんになってしまうと社会的損失は非常に大きいと考えられています。

2.乳がんの分類
乳がんの分類法はたくさんありますが、その中で重要なものをあげます。

1つは浸潤度合いに応じて非浸潤がんと浸潤がんがあります。非浸潤がんは乳がんが発生する乳管や小葉内にとどまっており、周囲の間質といわれる血管やリンパ管が豊富な場所までは進んでおりません。よって基本的には転移を起こさないことになり、乳房の中の局所の病気といえます。通常自覚症状はなく、近年マンモグラフィ検診のおかげで徐々に発見される頻度が増加しております。一方、浸潤がんは周囲の間質まで進んでおり、転移を起こす可能性があります。よって全身の病気となります。

2つ目は病期分類です。0期からⅣ期の5段階まであり、その内0期(非浸潤がん)とI期を早期がんと呼んでいます。

3.乳がんの治療法
乳がんの治療は主に手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせて行います。

手術は乳房をすべて切除する乳房切除術と乳房の形を残す乳房温存術があり、乳房温存術の適応がある場合、残された乳房に放射線治療を追加することで、乳房切除術とほとんど同じ成績ですので担当の先生とよく相談して決めていただいたらと思います。また乳がんは腋窩リンパ節という脇のリンパ節に転移を起こしやすいのですが、今まで腋窩リンパ節に転移があるのかないのかの判断を手術前に評価することが困難なため、すべてのリンパ節を摘出しておりました。

近年、センチネルリンパ節生検の導入により、がん細胞がはじめに転移するリンパ節(このリンパ節をセンチネルリンパ節といいます)の同定が高い確率で可能となってきました。そのため、センチネルリンパ節生検を用いて、数個のリンパ節を摘出することにより転移があるかどうかわかるため、転移していない患者さんにとってはすべてのリンパ節を摘出する必要はなく、上肢のしびれや浮腫などの合併症は少なくなります。

また、2012年7月より乳房インプラントが承認され保険適応となりました。これは乳腺外科医と形成外科医が連携してはじめて実施可能となります。これにより乳房切除を行う場合、乳房インプラントによる乳房再建が可能となりました。

薬物療法はホルモン療法(内分泌療法ともいいます)、抗がん剤を用いた化学療法とハーセプチンを用いた分子標的治療があります。乳がんはエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンと関連があり、女性ホルモンに反応して大きくなるタイプがあります。その女性ホルモンの効果を減少させるのがホルモン療法です。

抗がん剤は文字通りがん細胞に作用する薬剤ですが、がん細胞だけでなく正常細胞にも同様に作用します。そのため、ある程度の効果を期待するなら、副作用もそれなりに現れます。しかしながら、その副作用を和らげるような治療も進歩しており外来治療が十分可能となってきました。

乳がんの領域は特に遺伝子解析も盛んにおこなわれております。その中の一つにHER2というがん遺伝子が発見され、その遺伝子の増幅している乳がんの予後は悪いことがわかってきました。さらに、HER2を発現しているがん細胞に作用する薬が開発され、今日ハーセプチンとして広く使用されています。ハーセプチンはHER2を発現しているがん細胞に作用するため効果も高く、また抗がん剤のような副作用はほとんどありません。このように年々乳がん薬物療法は進歩しております。

しかしながら、浸潤性乳がんの場合は局所の治療である手術のみの治癒では困難な場合が多く全身治療である薬物療法などの治療を組み合わせた集学的治療を行います。

また、今までは手術後に用いられてきた薬物療法が最近手術前に用いられることも多くなってきました。乳房切除術しか行えないような大きながんに対して薬物療法をすることによりがんが小さくなった場合、乳房温存術が可能となることや、薬物療法の効果は同じ薬物でも個人個人により効果の異なることがわかってきましたので、その効果を確認しながら個人個人に合わせた治療を行うことが可能となります。

乳がんの治療において手術、放射線治療や薬物療法以外の補完代替医療(民間療法など)において乳がんの進行を抑えたり再発を予防したりする効果が明らかとなっているものはありません。また、薬物療法と併用した時の安全性もわかっておりません。ですから、補完代替医療を受けたいときには担当医に相談した方がいいでしょう。

乳がんの移転・再発と診断された方

1.乳がんの転移形式
乳がんの転移・再発は乳房や乳房の皮膚、腋窩リンパ節などの局所再発と脳、肺、肝、骨や遠隔リンパ節などの遠隔転移の二つがあります。それぞれ治療の考え方が異なります。

局所再発の場合で、遠隔転移を伴っていなければ治療により、治癒を望むことが可能です。そのため、いろいろな全身画像検査を行いながら診断し、治療を行います。

遠隔再発の場合はいろいろな過去の臨床試験からほとんどの場合、治癒を望むのは困難です。ですから、治療の目的は「治療により生活の質の低下を最小限にして、乳がんによる症状を緩和する」もしくは先送りする」ことです。
2.転移形式別の治療法
局所再発の場合は手術を主体とした治療を考慮します。そして、必要に応じて放射線治療や薬物療法を追加いたします。

遠隔転移の場合は、その転移場所により治療法が異なりますが、考え方は全身病ですので、全身治療としての薬物療法が主体となります。必要により、放射線治療を追加いたします。ここで大切なのは原発巣の病理組織と、採取が可能であれば転移部位の病理組織です。なぜなら乳がんの治療法選択にがんの性質が大きくかかわっており、それに基づいてホルモン療法、化学療法や抗HER2療法の単独または併用が検討されます。

乳がんの転移・再発で治療を検討する場合は、今までの臨床経過、画像検査と現在の転移部位の評価ならびに病理組織を持参していただいた方が迅速に治療を行えます。